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アカコ

 

アカコ


 七月の早朝の海は、ことさらに蒼く澄み、穏やかな波がゆっくりと揺らいでいる。そんな蒼い穏やかな海に、突如として体長数ミリの小魚の大群が出現し、海面が帯状に数キロにも渡って紅く染まって見事があるのだろうか。 

 この話、もちろん私自身は一度もお目にかかったことが無いので、色々と聞き回ってみたところ、水産試験場でも話としては聞いているのだが、まだはっきりとしてた資料はつかんでいないということだった。地元の人でも「見た」と言う人は極めて少ない。そしてそれらは、白えび漁に従事する岩瀬近辺の漁師さんたちである。

 紅い小魚の大群とは、ほたるいかの稚魚を指すのだが、地元では「アカコ」と呼んでいる。

 五月頃に産み落とされたほたるいかの赤ちゃんたちが、ようやく巣立ちして沖を目指して必死に泳いでいく、というのが、七月の朝の海の珍現象の真相のようだ。

 ただし、この現象、まことに残念なことに、陸からはほとんど見ることが出来ないのだそうだ。現象そのものが起きていても、遠目にはそれと気付かないまま見過ごしてしまうらしい。現に私が聞きまわった範囲でも、蜃気楼を見たことがあると応えた人より、ずっと少数でしかなかった。

 どうやら、民宿にでも泊り込んで、毎朝、白えび漁の船に乗せてもらうしか、めぐりあえる方法がなさそうだ。それとも今年の夏は、仕事も忘れて富山湾岸に借家住まいでもしてみようか。

   

投稿者 ほたるいかの水井 : 2006年5月1日 12:59